「ギルガメシュ叙事詩」における語りと崇高さ
ギリシャ神話や日本古代の神話など「大きな物語」を取り上げることの多い宮城聰による新作「ギルガメシュ叙事詩」。世界最古の文学作品とされるこの作品を宮城がどのように立 ち上がらせたのか。
宮城の演出でよく見られる、登場人物の動きと発話を分解して「ムーバー」と「スピーカー」という二人で一人の役を演じる方法が本作でも採用された。「ギルガメシュ叙事詩」は口承文芸であり、その物語がどのように伝えられたのかについては今現在全てを知ることはできない。しかし口承文芸という点から私は、物語というプロットの真実は正しく伝承されても、その真実に至る過程である人の機微や気持ちの抑揚のようなものは、この物語を紡いできた人そのものの演出が加わったものだろうと想像する。宮城の演出でいうと、物語は「ムーバー」によってプロット的な真実が語られ、「スピーカー」によってそこに至る人間的な震えや緊張が語られる。身体と発話をわざわざ切り離すことによって、物語の大きさを「ムーバー」から感じられる一方で、物語の大小や幅、人間臭さや振動を「スピーカー」から受け取ることができる。 続きを読む »