未来を見つめる目―『アンティゴネ~時を超える送り火~』を観て―
宮城聰演出作品『アンティゴネ~時を超える送り火~』(以後『アンティゴネ』と記す)は死者たちの物語であり、この芝居で語られる言葉は死者たちの言葉だ。ここで言う「死者たち」というのは、単に芝居の中で死んでいく登場人物たちのことだとか、原作者ソフォクレスが生きた約2500年前の古代ギリシャの人々のことだけでなく、人類が誕生して以来死んでいったものたちすべての言葉だと言うことができるかもしれない。
舞台は法衣を纏ったひとりの僧侶が、白い衣装で身を包み水に覆われた舞台上を彷徨っている者たち〔=霊魂たち〕にそれぞれ劇の役割を与えるところからはじまる。霊魂たちはある者はアンティゴネとなり、ある者はクレオンとなり、またある者は登場人物たちの声=言葉となり、ある者は楽を奏でる。役を与え、役を演じるというこの行為は、あたかも演劇の原初的体験のようでもある。 続きを読む »