劇評講座

2020年10月20日

秋→春のシーズン2019-2020■入選■【グリム童話~少女と悪魔と風車小屋~】小田透さん

カテゴリー: 2020

人間的不自然さの彼方にある奇跡的な自然に

 オリヴィエ・ピィの『グリム童話~少女と悪魔と風車小屋~』の物語は民話的な形式にのっとっている。匿名のキャラクターたち――父親、悪魔、少女、王様、庭師――が、どこともつかぬところ――森、庭、水車小屋――を、移動していく。そして、父親を恨むこともなければ、王様を憎むこともない、すべてをありのままに受け入れて受け止めることのできる純真な自然児である少女が、悪意というよりは軽率さによって罪を犯した父と、彼自身のものではない罪の咎を負わされた王とを、救ってしまう。 続きを読む »

秋→春のシーズン2019-2020■入選■【メナム河の日本人】山本伸育さん

カテゴリー: 2020

 アユタヤ遺跡の破壊された仏像群は、ビルマとの戦闘の歴史であることは知っていた。そのような時代、その場所に日本人が住み、活躍していたことに思いをはせると感慨深い。
 静寂のなか漆黒の闇のなかから舞台が始まる。照明とともにセミの鳴き声が聞こえはじめ、蒸し暑さを感じるアユタヤの世界に引きずり込まれていく。張りつめた緊張感を漂わせながら舞台は進んでいく。
 「メナム河の日本人」の壮大な物語は、王宮と日本人町とリゴール地方の3つの場所で展開していく。王宮での謀略・策略の緊張感と日本人町での祖国を懐かしむ思いとリゴールでの先を思う不安感と3つの場面設定の中で緊張と弛緩が繰り返されて、増幅させながら物語は展開する。その中で山田長政が見せる、強い生き方とやさしさと孤独感が折り重なって物語に厚みを与えていく。 続きを読む »