『授業』―「野ざらしで吹きっさらしの肺」としての叫び―
ウジェーヌ・イヨネスコ『授業』という作品をはじめて観たのは(というより、「イヨネスコ」という名前をはじめて知ったのは)いまから10年ほど前、まだ学生だった頃に、百景社による公演を観に行った(正確には、公演のお手伝いをして、本番を観させてもらった)ときだった。かなり前のことなので詳細は覚えていないが、途中からどしゃぶりの雨が降りだしたこと(野外公演で、客席には屋根があったが、舞台上は野ざらしだった)、教授が言っていることも怒っている理由もさっぱり理解できなかったこと、そして終盤に一度暗転してふたたび明るくなると、ナイフを握りしめて血塗れになった教授が舞台上に茫然と突っ立っていたこと(雨はその頃にははかったようにやんでいて、余計に静かに感じられた)などが記憶の断片としておぼろげに残っていて、「なんだかこわい芝居を観た」という印象がある(ちなみに百景社は2009年の利賀演劇人コンクールにおいて、この『授業』で演出家の志賀亮史と教授役の村上厚二が優秀演劇人賞をW受賞している)。 続きを読む »