2017年7月23日

アヴィニョン法王庁日記(11) 2017年7月7日 公演二日目

SPAC文芸部 横山義志

気がつけばオフもはじまっていて、アヴィニョンの街はポスターで埋め尽くされている。ちょっとした広場ではパフォーマンスが。今年のオフは1,400作品以上。毎年増えている。アヴィニョンに住んでいる方によると、毎年ちょっとしたガレージなど、あらゆる場所がこの時期だけ劇場に改装されていくのだという。

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天気予報によれば今日の気温は38度~19度。ようやく水に入った方が心地よい季節に。

昨日のお客さんは批評家や劇場の人などが少なくなかったが、今日は大多数が一般の「本物の」お客さん。そのせいか、昨日よりもさらに温かく、ノリがいい客席。

現地スタッフと集合写真を撮影。アヴィニョン演劇祭のメイン会場にふさわしい最高のチームとの評判。照明スタッフは通訳する前から、こちらの意図を察して動いてくれるという。会場が巨大なので、照明は8人のチーム。地上30メートル以上のところに灯体があったりする。最上階に登ると風も強く、足がすくむ。14世紀によくこれだけのものを建てたものだが、今ここで毎年舞台をやっているスタッフにも頭が下がる。

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▲現地スタッフとの集合写真

この日は、10代前半くらいの子どもたちがカメラを手に、『アンティゴネ』を取材しに来てくれた。
目をキラキラさせながら楽屋を見学したり、スタッフの仕事を見たり、インタビューをしたり。

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▲衣裳デザインの高橋佳代さんにインタビューする子どもたち


▲その取材の成果がまとめられたビデオ こちらからもご覧いただけます。
 
 
*アヴィニョン法王庁日記バックナンバー*
(1) 2017年6月27日 静岡からフランスへ
(2) 2017年6月28日 アヴィニョン到着
(3) 2017年6月29日 仕込み一日目
(4) 2017年6月30日 仕込み二日目
(5) 2017年7月1日  仕込み三日目
(6) 2017年7月2日  アヴィニョン法王庁の歴史
(7) 2017年7月3日  法王庁中庭での上演の歴史
(8) 2017年7月4日  フォトコール
(9) 2017年7月5日  最終公開稽古(ゲネプロ)
(10) 2017年7月6日 公演初日
(11) 2017年7月7日 公演二日目
(12) 2017年7月8日 公演三日目
(13) 2017年7月10日 公演四日目

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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
*詳細はこちら
*アヴィニョン演劇祭サイトはこちら
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アヴィニョン法王庁日記(10) 2017年7月6日 公演初日

SPAC文芸部 横山義志

午後になって技術ディレクターのフィリップから連絡があり、作曲家のピエール・アンリさんが今日、89歳で亡くなったという。フランス現代音楽を代表する作曲家で、振付家モーリス・ベジャールが1967年に法王庁中庭で発表した『現在のためのミサ』の作曲者でもある。今晩初日の開演前に、可能であれば、何か追悼になることをしたい、とのこと。

「携帯電話の電源をお切りください」アナウンスと開演の間に一分間、アンリの有名な曲を流す、というのが先方の案だった。宮城さんは曲を聴いて、「ベジャールが使った『現在のためのミサ』だね、CD持ってるよ!」と言い、急遽冒頭の「ミニ・アンティゴネ」のなかに組み込むことになった。

駿府城での公演では、『アンティゴネ』の粗筋を5分で説明する「ミニ・アンティゴネ」を冒頭で上演した。今回はそのアイディアが発展し、なんとフランス語でやることに。

22時開演のはずだが、2,000人のお客さんが席に着くにはかなり時間がかかる。そのうえセキュリティチェックも厳しくなっているようで、少しずつしかお客さんが入ってこない。「10分は開演が押すだろう」と聞いていたが、22時10分にはまだ半分くらいしか埋まっていない。俳優たちはもう水のなかで、一度出てしまうと、引っ込むわけにもいかない。結局22時20分頃、ようやく開演。

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▲開演前の客席

「ミニ・アンティゴネ」組がうちわ太鼓を叩きながら出てくる。ふと歩みを止め、雲に覆われた群青色の空を眺めると、『現在のためのミサ』が流れてくる。30秒ほど、曲を聴きながら、空を目で追う。気づいたお客さんから、徐々に拍手が広がっていく。きっとここでベジャールの公演に立ち合った方も少なくないのだろう。

ふたたび歩み始め、太鼓を叩いて、「ミニ・アンティゴネ」がはじまる。「お話を忘れてしまった方々のために、これからフランス語でレジュメをします!フランス語は簡単ではないので、みなさんの応援が必要になります!」と石井萠水さんがフランス語で言うと、会場から大きな拍手が。


▲舞台映像抜粋(約3分)/「ミニ・アンティゴネ」の一部をご覧いただけます。 こちらからもご覧いただけます。

少しずつ晴れ間が見え、アンティゴネとクレオンが対峙するころには、満月に近い大きな月が煌々と照っている。やがて月は傾いていき、終演に向けて闇が濃くなっていく。

最後の精霊流しの場面では音楽が止み、闇に包まれた舞台に灯籠が流されていく。お客さんたちは固唾を呑みながら舞台を見守っていた。演劇祭代表代行のポール・ロンダンさんは「この法王庁で終演時に沈黙を聞いたのははじめてかも知れない。感動の厚みを感じた」という。

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▲観客総立ちのスタンディングオベーション

マクロン新政権の文化大臣となったフランソワーズ・ニッセンさんがいらして、気に行ってくださったらしく、「(いま自分がこの舞台を観ている)この時間が終わらないでほしい、この芝居が終わらないでほしい」とおっしゃってくださった。ニッセンさんはもともと編集者で、アヴィニョンに近いアルルを拠点とする出版社アクト=シュッド社の代表を務めていらっしゃる方。オリヴィエ・ピィやワジディ・ムアワッドなど、フランス現代戯曲の多くがこの出版社から出ている。フランスでもこれだけ演劇に深く関わってきた方が文化大臣になることはそう多くはないだろう。

先日アヴィニョンから選出されたばかりの「前進」所属の国会議員ジャン=フランソワ・セザリーニさんはここ10年ほどご自身で演劇をやっていたという。セザリーニさんは「クレオンの「人の心というものは、政(まつりごと)において、その手腕のほどが発揮されるまでは、知る由もない」という台詞にはとても感銘を受けました。たしかに権力を得ると人が変わるのは何度もみてきましたからね」とおっしゃっていた。

終演後のパーティーには、これまでSPAC作品に関わってくれた方、アヴィニョン演劇祭に関わっている方が初日を祝ってくださる。

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▲初日終演後に法王庁内でパーティを開いてくださった。

SPACで『タカセの夢』や『ANGELS』をつくってくれているメルラン・ニヤカムさんが、『現在のためのミサ』を聴いて驚いた、とおっしゃっていた。ちょうど今パリでベジャール振付・アンリ作曲の『現在のためのミサ』をもとにした作品を振り付けているそうで、開演を待っているときに電話でアンリさんが亡くなったことを知ったという。

パーティー後、演奏稽古(!)。とパーティーの参加者に言ったら、冗談だと思われたが、舞台からはやがて演奏が聞こえてくる。オマール・ポラスさんやケ・ブランリー美術館の方々が二時近くまで稽古につきあってくれる。午前2時半まで稽古。タニノクロウさんは稽古の最後まで残ってくれた。「稽古をやっているときだけが生きている気がする。自分の人生のほとんどは稽古。人の稽古を見られる機会は少ないので本当に楽しい」とのこと。これまで退館時間を気にしていた法王庁技術主任のクロードが、稽古を見ながら、「ここはお前たちの家だから、好きなだけやりな」と言ってくれた。午前4時退館。

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▲パーティー後の稽古
 
 
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(2) 2017年6月28日 アヴィニョン到着
(3) 2017年6月29日 仕込み一日目
(4) 2017年6月30日 仕込み二日目
(5) 2017年7月1日  仕込み三日目
(6) 2017年7月2日  アヴィニョン法王庁の歴史
(7) 2017年7月3日  法王庁中庭での上演の歴史
(8) 2017年7月4日  フォトコール
(9) 2017年7月5日  最終公開稽古(ゲネプロ)
(10) 2017年7月6日 公演初日
(11) 2017年7月7日 公演二日目
(12) 2017年7月8日 公演三日目
(13) 2017年7月10日 公演四日目

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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
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2017年7月20日

アヴィニョン法王庁日記(9) 2017年7月5日 最終公開稽古(ゲネプロ)

SPAC文芸部 横山義志

今日は本番前の最終公開稽古(ゲネプロ)。

14時舞台・照明スタッフ劇場入り。15時音響・衣裳スタッフ入り。16時半俳優集合、楽器・小道具セッティング。17時~17時40分トレーニング。NHKの撮影クルーが入る。

ゲネプロに向けて、今年のふじのくに⇄せかい演劇祭で『MOON』を発表してくれた演出家のタニノクロウさん、アヴィニョン演劇祭報告会のためにドキュメンタリーを撮ってくれる映画監督の本広克行さん、「ストレンジシード」のウォーリー木下さん、劇団渡辺の渡辺亮史さんが到着。

19時~20時全体稽古。20時~21時演奏稽古。その後楽屋入り。

21時半客席会場。22時ゲネプロ開始。

アヴィニョン演劇祭の法王庁中庭でのゲネプロは、プレス関係者ではなく、基本的に演劇祭で働く方々やお世話になった方々に観ていただくものだそうで、今日は2,000人の客席に1,000人くらいが来てくれている。

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▲法王庁前広場で開場を待つ観客

公演後には宮城さんインタビュー三本に、SBSのための鈴木隆秀さんによるオリヴィエ・ピィさんインタビュー。鈴木さんがピィさんに「なぜこの作品を法王庁中庭のオープニング作品として招聘したのか」と聞くと、「アヴィニョン演劇祭のコンセプトにぴったりだと思ったからだ。アヴィニョン演劇祭は民衆的な演劇のフェスティバル。宮城さんの作品は偉大な芸術なのだが、全ての人々のための偉大な芸術なんだ」と答えてくれた。

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▲鈴木隆秀さんのインタビューに答えるオリヴィエ・ピィさん

演劇祭ディレクターのオリヴィエ・ピィさん演出作品に出ている俳優さんたちのなかには静岡に来たことがある方も少なくない。

昨年「ふじのくに⇄せかい演劇祭」の『少女と悪魔と風車小屋』で主演してくれたデリア・セピュルクル・ナティヴィさん「この法王庁中庭の空間をすごくリスペクトした演出で、これだけこの空間にふさわしい作品ははじめて見た」とおっしゃってくれた。

終演後、楽屋口に2009年の『少女と悪魔と風車小屋』や2012年の『ロミオとジュリエット』で主演したセリーヌ・シェエンヌさんがオリヴィエ・ピィさんと話している。セリーヌさんに声をかけると、「オリヴィエは「楽屋に入ればいいじゃん」っていうんだけど、本当に入っていいのかな、と思って・・・」と、なんだかもじもじしている。SBS鈴木さんのインタビューでは「私は世界で一番のファンなんです!」とおっしゃり、楽屋に連れて行くと、やはり『少女と悪魔と風車小屋』『ロミオとジュリエット』の主演をした美加理さんと熱く抱擁。

「せっかくなので何かアドバイスを」と美加理さんに聞かれたセリーヌさんの言葉。

「本当に最高の舞台だったから、このままやればいいから、とにかく楽しんで。日が暮れてくると、鳥が飛んでくるでしょう。それでトランペットが鳴って、お客さんが入ってくる。あの客席の前で舞台に立つと、すごく特別な気分。すごいエネルギーをもらって、舞台の上にいる。この感覚は、きっと死ぬまで忘れられない。私もここで舞台に立つたびに、ああこの感覚、と思う。この気持ちを思う存分味わって。」

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▲セリーヌ・シェエンヌさん(左)と美加理さん(右)
 
 
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(4) 2017年6月30日 仕込み二日目
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(6) 2017年7月2日  アヴィニョン法王庁の歴史
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(8) 2017年7月4日  フォトコール
(9) 2017年7月5日  最終公開稽古(ゲネプロ)
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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
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アヴィニョン法王庁日記(8) 2017年7月4日 フォトコール

SPAC文芸部 横山義志

今朝の『ラ・プロヴァンス』紙のアヴィニョン演劇祭特集記事に『アンティゴネ』と宮城さんの写真が大きく載っている。スタッフが泊まるホテルの方が「あなたたちが出てる!」といって見せてくれたという。

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今日はフォトコール。

17時俳優集合、楽器・小道具セッティング。17時半~18時10分トレーニング。

元静岡第一テレビのディレクターで今はオランダ在住の鈴木隆秀さんがSBSの番組のために取材に来てくださる。久々の再会。フランスのテレビクルーがトレーニングでお経を声に出すのを熱心に撮影。

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その後楽屋入り。19時~20時全体稽古。20時楽屋入り、演奏稽古。21時50分スタンバイ。22時~22時40分フォトコール。

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▲フォトコールに向けカメラをスタンバイするメディア各社

22時40分~23時30分宮城さん・美加理さんインタビュー。

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0時~午前1時40分通し。アヴィニョンに来てから、はじめて止めずに通すことができた。

やはり影を出したい場面では明るい部分で字幕が読みにくく、4時近くまで解決策を探る。午前4時退館。
 
 
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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
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アヴィニョン法王庁日記(7) 2017年7月3日 法王庁中庭での上演の歴史

SPAC文芸部 横山義志

14時からスタッフ作業。16時、アヴィニョン演劇祭ディレクターのオリヴィエ・ピィさんが法王庁中庭でフランス国営放送のインタビューを受ける。宮城さんも登場。

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▲青いカバンを背負っているのがオリヴィエ・ピィさん

18時俳優集合。訓練のあと、20時から23時まで舞台稽古。はじめはまだ日が出ていて、暖かい。今日は31度~19度。夜もだいぶ寒さが和らいだ気がする。

23時から24時まで照明の調整。24時から午前3時半まで、再度舞台稽古。

法王庁中庭での舞台上演についての本を読みはじめる。

アヴィニョン市はフランス革命中にフランスに編入され、法王庁(教皇宮殿)はその後監獄になったり、兵舎になったりしていた。1922年には法王庁前広場で『ハムレット』が上演されたことがあったが、そのときにはカトリック系の新聞『ラ・クロワ』紙に「法王庁の中でなくてよかった」という趣旨の記事が出たりしている。

はじめてこの法王庁中庭で演劇が上演されたのは、第二次大戦後間もない1947年のことだった。二人の画商が「アヴィニョン芸術週間」というイベントを企画し、ピカソ、マティス、ジャコメッティ、シャガール・・・といった前衛芸術家の作品を展示。当時パリで評判になっていた35歳の演出家・俳優のジャン・ヴィラールに声をかけて、法王庁中庭での上演をもちかけた。

ヴィラールは法王庁中庭を見学して、「この法王庁中庭ほどにでこぼこで芝居に向かない場所は見たことがない。そのうえ歴史の重みがありすぎる」といった第一印象をもったが、「何か特別なことが起こるような気がする」とも思って引き受けたという。このときヴィラールは、パリで成功した作品ではなく、ほとんど上演されていなかったシェイクスピア作品『リチャード二世』と新作2本を上演した。これがフランスにおける演劇の地方分散化のさきがけとなっていく。これ以来アヴィニョンでは、パリなどで成功を収めた作品をやるのではなく、そこでしか見られない新作や忘れられた傑作を上演することが一つの原則となった。

アヴィニョンの住民たちが若い劇団員たちにホテルや自宅、食事を提供した。兵士たちが舞台を組んでくれて、1,500の椅子を中庭に置いて客席にした。照明は7台の灯体のみ。希硫酸を入れたバケツの中に亜鉛と銅の金属板を入れて電気を作った。光量が乏しいので、ゼラを使わず、白い光のみ。これ以来、ヴィラールは白い光のシンプルな照明や大きな舞台装置を使わない演出にこだわるようになる。ヴィラールの劇団にはジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、マリア・カザレス、ミシェル・ブーケなど、のちに映画スターとなる俳優たちも数多く参加。1950年代にはここに3,000席を超す客席が組まれるようになっていった・・・。

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▲現在の法王庁中庭の客席は約2,000席
 
 
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アヴィニョン法王庁日記(6) 2017年7月2日 アヴィニョン法王庁の歴史

SPAC文芸部 横山義志

今日は稽古はなしで、それぞれ個別に作業。ようやく法王庁を少し見学できた。

この「法王庁」(教皇宮殿、Palais des Papes)ができたのは14世紀のこと。1309年から1377年までの間、カトリック(キリスト教西方教会)の総本山ともいえる法王庁が、ローマからフランス王の影響下にあるこの地に移り、フランス出身の7代の教皇(法王)がここを拠点にしていた。さらに1378年から1417年までの「教会大分裂」の時期には、アヴィニョンとローマに二つの法王庁が分立する事態となっていた。

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▲法王庁 外観

教皇宮殿(Palais des Papes)のサイト:http://www.palais-des-papes.com/en

教皇宮殿は1335年から1352年にかけて建設された。ボニファティウス12世が高さ46メートルの「教皇塔」を含む「旧宮殿」を造営し、さらにクレメンス6世が「大礼拝堂」を含む「新宮殿」を増築した。この間、1348年にクレメンス6世がアヴィニョンをプロヴァンス女伯ジョヴァンナから購入したこともあり、完成したときには法王庁の財源がほとんど底をついていたという。アヴィニョンの町はこれ以降フランス革命に至るまで、教皇領となっていた。

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▲大礼拝堂

その巨大さや、あちこちに空けられた銃眼をみると、教会というよりもまるでお城のようだが、実際に要塞としての機能も果たしている。フランス貴族出身のクレメンス6世の時代にはフランス王家と法王庁は良好な関係にあったが、「教会大分裂」時代の14世紀末には、フランス王がアヴィニョン法王庁を見放し、フランス教会を法王庁から分離させようとして、それに抵抗したアヴィニョン教皇(今では「対立教皇」とも呼ばれる)ベネディクトゥス13世はこの教皇宮殿で4年半の籠城戦を強いられた。

「名誉の中庭(Cour d’honneur)」と呼ばれるこの中庭は、コンクラーベ(教皇選出会議)を経て選出された新教皇が大群衆の前にお目見えする場所だった。一時期はこの中庭に法王庁の法廷(控訴院)があったが、控訴院はやがて新宮殿の大礼拝堂下部にある「大聴聞室」に移転。この控訴院は西ヨーロッパ全土の教会に関する紛争に対応し、年間一万件の嘆願を処理していたという。まさにここでカトリック教会が善悪を裁いてきたともいえる。演劇祭期間中は、この「大聴聞室」が楽屋となっている。

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▲大聴聞室にパーテーションを立てて作られた楽屋

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▲名誉の中庭

舞台の右上に見える薔薇窓は、「名誉の中庭」に集まった群衆に新教皇が信者に三度の祝福を与える場所で、「赦免の窓(Fenêtre de l’Indulgence)」と名づけられている。ここは教皇が巡礼者たちに祝福と赦免を与えるところでもあった。1348年にアヴィニョンで疫病が大流行したとき、クレメンス6世は瀕死の病人たち全てに赦免を与えたという。
 
 
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アンティゴネ
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7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
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2017年7月16日

【シアタースクール通信2017 #1】開校です!

7月8日(土)より、いよいよSPACシアタースクール2017の稽古が始まりました!
学校では触れることのできない「演劇の面白さ、奥深さ」を地域の子どもたちとその保護者の方々に知ってもらうことを目的として、2007年にスタートした「シアタースクール」。11回目となる今回は37名の中高生が参加してくれました。

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自己紹介では「人見知りです」と話す子が多かったのに、なんだかあっという間に打ち解けている様子。年齢も趣味もバラバラで、学校の演劇部に所属している子から、「演劇ははじめて」という子まで、演劇経験も様々です。ふだんとは少し違った友達ができるのもシアタースクールの楽しいところかもしれませんね!

0708②

稽古初日には早速『オフェリアと影の一座』の台本を読んでみました。 演出の中野真希さんから「この場面はゆっくり。前の人の台詞をよく聞いてから読んで。」などと指示があり、みんな工夫して読んでみます。
今回は、ある古典の名作が劇中劇として登場します。「超自然の誘いは…」とか「神聖な御堂の扉を…」とか、なかなか聞き慣れない単語や言い回しに四苦八苦…。演出家やアシスタントのSPAC俳優たちが、言葉の意味や時代背景を分かりやすく解説していきます。

0708③

◆演出・中野真希 withアシスタントのご紹介
ここで、シアタースクールの指導役で今回『オフェリアと影の一座』を演出する中野真希、そして皆さんと一緒に作品づくりのお手伝いをするアシスタントをご紹介します。

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左から、片岡 佐知子、関根 淳子、中野 真希、河村 若菜、春日井 一平

このほかに、桜内結う、佐藤ゆず、永井健二の3名がアシスタントを務めます。この3人は、アヴィニョン演劇祭(フランス)の『アンティゴネ』(7/6~12)に出演していたため、3日目の稽古以降に合流となります。3人の写真はまた後日!

~演出・中野真希から稽古初日でのメッセージ~
「ここは他人の集まりです。違う考えや価値観を持った人が集まっています。ここのメンバーがみんな同じだったら面白い作品にならない。「こんな人がいる」「あんな面白い人がいる」というように、みんなの個性が輝く作品にしたい。そのためには、どうしたらいいか。考えていきましょう。」

どんな作品になっていくのか、ワクワクしてきますね。これから本番までの道のりを少しずつブログでご紹介していきますので、今年も応援よろしくお願いいたします!

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SPACシアタースクール2017
『オフェリアと影の一座』
演出・構成:中野真希
原作:ミヒャエル・エンデ
出演:静岡県内の中高生
2017年8月19日(土)・20日(日)各日16時開演
会場:静岡芸術劇場
*詳細はこちら
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2017年7月11日

アヴィニョン法王庁日記(5) 2017年7月1日 仕込み三日目

SPAC文芸部 横山義志

スタッフはお昼頃から作業。俳優は1730入り、楽器・小道具セッティング。18時過ぎからトレーニング。興味津々のフランス人撮影クルー。今日は18:30から声出し可。法王庁に俳優たちの太い声が響く。

18:30~20:00サウンドチェック。
20:00~21:00演奏稽古。
21:00~21:30全体稽古。
21:30-23:00照明フォーカス。
23:00-午前3:30全体稽古。

日没が遅いので照明の作業時間が限られていて、稽古はやはり深夜に。30メートルの壁に影をきれいにうつすための試行錯誤も。稽古に入っても、俳優の動きに合わせた明かりの調整に苦心。今日の天気予報によれば、気温は25度~16度。この時期にしては肌寒い。午前1時を過ぎるとどんどん寒くなる。水の中で動かずに明かり合わせを待つ俳優たちは、かなりしんどいらしい。水から上がって、足踏みしながら待つ姿も。

壁に字幕を出してみると、影を出す場面では壁を明るくしなければならず、読みにくくなってしまって悩ましい。明かりが決まってから調整するほかない。

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フランス語字幕の他、メガネ方式で英語・アラビア語字幕も作成している。フランス語字幕は『イナバとナバホの白兎』ケ・ブランリー美術館(パリ)公演につづいて、村上春樹の翻訳などで知られるコリーヌ・アトランさんが作ってくださった。英語は2004年のギリシャ・デルフィー公演のために、私がアメリカ人の友人と作ったものがふたたび使われることに。アラビア語字幕は、日本の小説などを手がけているシリア系フランス人の編集者の手によるものだという。

英語とフランス語の他にアラビア語が選ばれたのは、アヴィニョン市内にアラビア語を母語とする住民が少なくないこともあるという。フランスにはアルジェリアなどアラビア語圏北アフリカの旧植民地からの移民が多いため、アラビア語は二番目に多くの人が話している言語でもある。アヴィニョン演劇祭ディレクターのオリヴィエ・ピィさんはお父さんがアルジェリア生まれのピエ・ノワール(北アフリカ植民地に住んでいたフランス人)で、北アフリカへの関心も高い。この『アンティゴネ』上演が、フランスが抱えている分断へのメッセージともなることを期待してくれているのかも知れない。
 
 
*アヴィニョン法王庁日記バックナンバー*
(1) 2017年6月27日 静岡からフランスへ
(2) 2017年6月28日 アヴィニョン到着
(3) 2017年6月29日 仕込み一日目
(4) 2017年6月30日 仕込み二日目
(5) 2017年7月1日  仕込み三日目
(6) 2017年7月2日  アヴィニョン法王庁の歴史
(7) 2017年7月3日  法王庁中庭での上演の歴史
(8) 2017年7月4日  フォトコール
(9) 2017年7月5日  最終公開稽古(ゲネプロ)
(10) 2017年7月6日 公演初日
(11) 2017年7月7日 公演二日目
(12) 2017年7月8日 公演三日目
(13) 2017年7月10日 公演四日目

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第71回アヴィニョン演劇祭オープニング招待作品
アンティゴネ
構成・演出:宮城聰 / 作:ソポクレス / 出演:SPAC
7月6日(木)・7日(金)・8日(土)・10日(月)・11日(火)・12日(水)各日22時開演
会場:アヴィニョン法王庁中庭
*詳細はこちら
*アヴィニョン演劇祭サイトはこちら
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2017年7月9日

アヴィニョン法王庁日記(4) 2017年6月30日 仕込み二日目

SPAC文芸部 横山義志

午前8時から舞台上に水を入れていく。全て入れるのに8時間かかるという。

日没が午後10時近いので、照明の作業時間が限られていて、照明の調整が終わらず、少し稽古が押すことに。17:30 俳優入り、楽器セッティング。18:30トレーニング。18:30-20:00まだ観光客がいて音が出せないので、静かにサウンドチェック。20:30-21:30演奏込みのサウンドチェック。21:30-23:00照明フォーカス。23:00-午前3:30全体稽古。

駿府城公演に比べ、三倍近い広さ。僧侶が舟で進む距離も倍近くなっているという。舞台は間口40メートル、奥行き16メートルで、約570平米。水深も2~3センチ深くなった。床がかなりでこぼこで、一番床が高くなっているところをカバーできるように調整したという。

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アヴィニョンでは日没の時刻が21時過ぎなので、開演は22時。日が落ちると気温差が生じ、風が生まれる。法王庁で舞台を観るとき、よく強い風が吹いているのはそのせいもあるらしい。南仏で「ミストラル」と呼ばれる冷たい北風もよく吹く。そして四方の壁に囲まれた巨大な空間のなかで渦を巻く。

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今日は日中も26度くらいまでしか上がらず、最低気温は13度という。法王庁中庭の体感温度はずっと低い。深夜0時くらいになると風は凪いでいくが、気温はいよいよ下がっていく。水に足を浸している俳優たちは、防寒の工夫を凝らしてはいるが、かなりこたえるようだ。「手を入れてみたら冷蔵庫の水みたいだった」という。
 
 
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(7) 2017年7月3日  法王庁中庭での上演の歴史
(8) 2017年7月4日  フォトコール
(9) 2017年7月5日  最終公開稽古(ゲネプロ)
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会場:アヴィニョン法王庁中庭
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2017年7月6日

アヴィニョン法王庁日記(3) 2017年6月29日 仕込み一日目

SPAC文芸部 横山義志

午前4時半起きで、5時半頃に宿を出てアヴィニョンの城壁の中へ。5時50分法王庁前に集合。機材を積んだトラックが到着している。石畳の段差をバックで登ってきたという。法王庁担当のスタッフと顔合わせ。法王庁の楽屋口から中庭の舞台に入っていく。

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今回の演出では、舞台上に水を張っている。法王庁中庭の舞台にもすでに水が…というのは想定外で、この二日の大雨で溜まったもの。まずは機材を置いたりマーキングしたりできるように、水抜きをしなければならない。モップで少しずつ水をポンプの方に集めていく。気の遠くなるような作業。

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舞台装置の岩を搬入。まるで測ったかのように搬入口ギリギリ。

なんとか水以外はセッティング。世界遺産のアヴィニョン法王庁に、なぜか和風の石庭。ミスマッチの妙。

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法王庁は朝9時から見学できるようになるので、仕込みしている横を観光客が通っていく。

法王庁の楽屋。アーチ状の天井、フレスコ画、ステンドグラス。これもかなり不思議なシチュエーション。

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14時に俳優入り、楽屋準備。16:30舞台上で居所合わせ。水が入らないうちに、俳優の位置をマーキングしていく。17:30~18:30夕食休憩。22:00~24:00舞台上で早速稽古。高さ30メートルの法王庁中庭の壁に俳優の影を大きく映し出す。ここでは、駿府城公園で上演したときよりも、ずっと大きな影を作ることができる。

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その後、照明の調整作業。午前4時まで。
 
 
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(5) 2017年7月1日  仕込み三日目
(6) 2017年7月2日  アヴィニョン法王庁の歴史
(7) 2017年7月3日  法王庁中庭での上演の歴史
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