「ウィズコロナ様式の可能性と野外劇」
舞台のうえには傘屋の仕事場とおぼしきものがポツンと立っている。色とりどりの傘が並んでいる。開いたものが手前に、閉じたものが下手側の天井からぶら下がっている。上手側の一段高くなったところの机には傘職人のおちょこがいる。開いた傘の後ろで居候らしき檜垣が寝転んでいる。野外劇場である有度の舞台裏にそびえる大きな木のせいで、昭和の匂いをただよわせる舞台装置はやけに小さく、いかにも作り物めいて見えるが、作り物でしかない歴史的時間と、それにシンクロしない自然の風景という不釣り合いな場のなか、事実とゴシップ、虚構と妄想が混ざり合う。そこからなにかとても奇妙で異様な舞台的真実が迫り出してくる。 続きを読む »