2017年1月20日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#8】稽古風景写真 ヘアメイクも入りました!

『冬物語』のおためし劇場レポートでは、おためし劇場で観ていただいた冒頭からの舞台での稽古の様子をご紹介しましたが、その続きのシーンの様子も少しご紹介します。ヘアメイクも入ってきています!

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嫉妬に狂う王リーオンティーズ(左・ムーバー・大高浩一)と、彼の誤解を必至に解こうとする家臣アンティゴナス(右・ムーバー・吉見亮)

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ハーマイオニの産んだ赤ちゃんをリーオンティーズに見せる侍女たち(左・佐藤ゆず、右・赤松直美)

s-HI8_8325のコピー
ハーマイオニを裁く法廷でアポロンの神託を読み上げる役人(ムーバー:貴島豪)

シチリアが舞台の前半は、重苦しい空気が満ち、最後には悲しい出来事が折り重なるまさしく悲劇。それに対して、ボヘミアが舞台となる後半は、うってかわって、陽気な人々が登場。にぎやかな村祭りが繰り広げられます。

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ボヘミアの荒地に捨てられたシチリアのお姫様パーディータを見つけた漁師の父(右・ムーバー・小長谷勝彦)とその息子(左・ムーバー・横山央))

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漁師の息子を取り合う村の娘。左はモニカ(ムーバー・佐藤ゆず)、右はダーシャ(ムーバー・桜内結う)

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漁師の娘として育てられたシチリアのお姫様パーディータ(ムーバー・布施安寿香)とボヘミア王子フローリツェル(ムーバー・大内米治)

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そして、謎の詐欺師・オートリカス(ムーバー・武石守正)

いよいよ1月21日(土)は一般公演初日です。
どうぞ、お楽しみに。

終演後には、アーティストトークもあります。

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1月21日(土) アーティストトーク 終演後1Fロビーにて開催

宮城聰(演出)& たきいみき、布施安寿香、本多麻紀(出演)
司会:大岡淳(SPAC文芸部)
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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月13日

【知られざる真夏の夜の夢#2】シェイクスピア+野田秀樹=?

本日は、『真夏の夜の夢』の戯曲についてご紹介します。

原作は、シェイクスピアの喜劇『A Midsummer Night’s Dream』。
『夏の夜の夢』もしくは『真夏の夜の夢』と訳されています。
日本での上演回数も多く、オペラやバレエにもなっているため、ご存じの方も多いかもしれません。
メンデルスゾーンによる劇付随音楽『結婚行進曲』も有名ですね!(パパパパーン…♪って曲です)

今回上演される『真夏の夜の夢』は、そのシェイクスピアの戯曲を、世界的に活躍する劇作家・演出家の野田秀樹が潤色したものです。
興味のある方は、原作『夏の夜の夢』小田島雄志訳(白水Uブックス)もぜひ読んでみてください!
どのようなアレンジがされているのかを知るのも、楽しみ方のひとつです。

SPACでの初演は、2011年の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」です(演出:宮城聰)。
それから、2014年のロングラン公演「フェスティバル/トーキョー15」での公演と上演を重ねてきました。
宮城は「フェスティバル/トーキョー15」のアフタートークで、野田秀樹作品への思い入れを語っています。

(以下、「フェスティバル/トーキョー15」のFacebookより)

さて、先にも書きました通り、本作のベースはシェイクスピア作の恋物語です。
森に迷い込んだ4人の恋に悩む若者たち。そこで出会った妖精パックが、恋の媚薬でいたずらをして、
人間と妖精が入り乱れての大騒動!というのが大筋。


↑妖精パック(牧山祐大)

…かと思いきや、なぜかそこにシェイクスピアの原作には登場しない悪魔・メフィストフェレスが参戦!!
舞台も富士の麓の「知られざる森」に置き換えられ、登場人物名や台詞にも、思わず笑ってしまうような言葉遊びがふんだんに盛り込まれています。
そんな魅力的な登場人物(登場妖精?)たちの紹介は、また改めて♪


↑左・メフィストフェレス(渡辺敬彦)、右・そぼろ(本多麻紀)

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SPAC秋→春のシーズン2016-2017 ♯5
『真夏の夜の夢』
2017年
2月25日(土)/3月5日(日)・11日(土)・18日(土)・19日(日)・20日(月・祝)
演出:宮城 聰
作:ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳『夏の夜の夢』より
潤色:野田秀樹
音楽:棚川寛子
出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月12日

おためし劇場 シェイクスピアの『冬物語』編 レポート

1月8日に今年最初の静岡芸術劇場でのイベント「おためし劇場」が開催されました。

レポーターは大阪の「人形劇団クラルテ」から研修でいらしている佐藤結(さとうゆい)さんです。

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寒さが一層増しつつある折柄、いかがお過ごしでしょうか。
先日、初日を約一週間後に控えたシェイクスピアの『冬物語』のおためし劇場が開催されました。

あいにくの雨模様でしたが、約30名のお客様に参加いただきました。お足元の悪い中お越しいただき、誠にありがとうございました。

まずは、カフェシンデレラにてSPACの新作『冬物語』がどんな作品なのか、制作部スタッフが簡単にご紹介。そしていざ劇場内へ!

初日を約一週間後に控えているとはいえ、まだまだクリエーション中の本作。
稽古は幕開けシーンからスタート。

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場所はシチリア。シチリア王・リーオンティーズのところに、幼少の頃を一緒に過ごした大親友のボヘミア王・ポリクセネスが訪問し、滞在9ヶ月が経ったある日。


シチリア王の臣下・カミロー(左・ムーバー 牧山祐大)と、ボヘミア王の臣下・アーキデイマス(右・ムーバー 赤松直美)が、シチリア王の宮廷で立ち話。奥からはシチリアの王子・マミリアス(ムーバー ながいさやこ)が。


シチリア王・リーオンティーズ(ムーバー 大高浩一)とボヘミア王・ポリクセネス(ムーバー 泉陽二)も登場。それに続くのは、ボヘミア王の臣下・アンティゴナス(ムーバー 吉見亮)とその妻ポーリーナ(ムーバー たきいみき)。一番後ろには王妃・ハーマイオニの侍女・エミリア(ムーバー 桜内結う)が。


ポリクセネスは、急に自国のことが不安になり、リーオンティーズに「明日、帰国したい!」と。リーオンティーズはもう少しいてくれと頼むが、聞いてはもらえず。


リーオンティーズは、ハーマイオニ(ムーバー 美加理)に、「お前も、説得してくれ」と。そこで、ハーマイオニが懇願すると、ポリクセネスは滞在延期を受け入れる!?


その様子を見ていたリーオンティーズは、王妃ハーマイオニとポリクセネスにあらぬ疑いをかける。彼の嫉妬からすべては始まる…


舞台後方にはスピーカー(語り手)が。山本実幸(左)はマミリアス、阿部一徳(右)はリーオンティーズのスピーカーを担当。

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ある程度の長さシーンを通すと、演出の宮城さんから、俳優の演技に対して、コメントが。緊張の一瞬…。

参加された方からは、「初めてプロの稽古を見たのでとても圧倒された」「話し方などの指導がこんなに細かくあるのかと思った。」といったご感想をいただきました。

稽古見学後は、出演者による簡単な自己紹介。総勢22名の出演者が並ぶ姿はそれだけで圧巻です。

稽古中の表情と普段の表情、その二面に接することができるのもおためし劇場の醍醐味ですね。

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その後、演出の宮城さんへのQ&A。

やはり皆さんが気になるのは、なぜ今回、二人一役の手法で作ることにしたかという点。

「(物語のきっかけとなる、リーオンティーズが前触れなく激しく嫉妬に狂う点をさして)『冬物語』という戯曲は、シェイクスピアらしくない始まりで、ヨーロッパのリアリズムの演技では、どうしてこういう状況になったのか、お客さんには納得できないところがある。だからリアリズムでやろうとした場合には、セリフに書かれていない動きを入れたり、ここに至る経緯を想定し、この嫉妬を理解できるようにする。けれども、シェイクスピアの戯曲自体には、この嫉妬はやはり突然のものとして書かれている。これをヨーロッパ的なやり方ではない、別の手法を用いたらまた面白いものができるのではと思い、二人一役を選んだ」と話されました。

そのほかにも、「出演者が22人もいるなか、練習はどのように?」といった質問や、「ムーバー(動き手)の表情や動きが、スピーカー(語り手)のセリフが作り出す表情に比べて、抑制されているのはなぜ?」といった稽古を観ての鋭い質問も。

そして「『冬物語』を通して観客に何を伝えたいか?」という質問には…
「シェイクスピアのいろいろな戯曲を読むと、ヨーロッパではこんなにも戦争をしていたのかと思う。シェイクスピア戯曲では、“人間の愚かさ”によって死が訪れるストーリーが常だったが、『冬物語』など最晩年に書かれた作品では、犯した過ち・愚かさによって人が死なない話になっている。人が人を殺さない、人への赦しがある。大きな過ち・愚かさを持つ人間がそれでも赦される話。シェイクスピア自身、あれだけ人が死んだり、殺し合う物語を書いてきたが、最晩年には、人が人を殺すことはもうやめてほしいと思って書いたのではないか。イギリスのEU離脱をはじめ、歴史が逆戻りしているかのような昨今の世界情勢を見ていて、よく知られたシェイクスピア戯曲ではなく、人が人を殺すことのない『冬物語』を選んだ」とのことでした。

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宮城さんから濃厚な話を聞いたあとは、参加者の皆さんには舞台にも上がっていただきました。

実際の上演と同じ完全暗転を体験してみたり(かすかな灯りを頼りに俳優は舞台上を移動するのです)、俳優が舞台上から見ている景色を見たりすることができました。今回の舞台美術には、「こんな素材で、こんな空間ができるとはびっくり!!」という感想をたくさんいただきました。「今までの舞台装置で最もインパクトがありました」という声も。ぜひ劇場でお確かめください。

初日まで一週間を切りました。
舞台作業もいよいよ大詰め、日々の稽古を通じて作品はぐんぐん成長しています。
ご期待ください!

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月9日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#7】今日の劇場はひっそりと

シェイクスピアの『冬物語』は、
年が明けて1月4日から劇場での稽古を着々と進めています。

前回のブログで紹介しました、謎のクルクルは、
不思議な模様を浮かび上がらせながら、劇場の天井近くまでそびえています。

クルクルは、小さな段差にも丁寧に貼られていきました。

それにしても、劇場の中に入り、
できあがった舞台舞台装置の全貌をみると、
もうそれだけでも圧巻です。

素材に継ぎ目があるのを見ると、
劇場に持ち込まれたミシンは、どうやらこのクルクルを、
つなぎ合わせるために使われたようですね。

さて、昨日1月8日には、作品の創作過程をご覧いただける、
「おためし劇場」が開催され、今日は新年最初の稽古休み。
(おためし劇場の様子は次回のブログで、たっぷりご紹介します。)

そんなわけで、劇場の中はひっそり。

でも、静けさの中で、今日も作業が進められています……

今日は照明作業の日。

照明デザイナー大迫さん指揮のもと、
照明スタッフが総出で作業しています。

舞台で俳優の立つべき位置にスタッフが立ち、
操作卓にいるスタッフが照明を操作し、
実際の明かりのあたり具合をみながら、
大迫さんが一つ一つのシーンの
明かりの位置や強さ、変化の仕方などを
決定していきます。

一人ではできない、現場にいる全員での協力作業です。

照明は、客席の上にも吊るされています。

暗くてわかりにくいのですが、
手前の明るみにいらっしゃるのが照明デザイナー大迫さん、
奥の明るみの操作卓にもスタッフが。

暗い劇場の中でひっそりと進められる作業は、なんだか神秘的。

作品の完成に向けて、劇場という空間に
また一つの新たな魔法がかけられていく一日です。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2017年1月7日

【知られざる真夏の夜の夢#1】大公開!チラシ撮影の裏側

2017年が始まり、『真夏の夜の夢』の公演も迫ってまいりました!!
「シェイクスピアの『冬物語』」とのお得な『冬・夏』セット券も販売中。詳細はこちら
2作品合わせて、シェイクスピアの魅力を存分に味わっていただけたら嬉しいです♪

さて、『真夏の夜の夢』のこのチラシ。森に住む妖精たちが、闇の中から顔を出しているイメージです。

こちら、どうやって撮影したかといいますと…合成ではないんです!

カメラマンさんが真上から撮影しています。


昨年夏のある日、静岡芸術劇場の舞台に集合した出演者。まさに黒山の人だかり…。
洋服、手袋、靴下に至るまで、全身真っ黒。そして頭には黒ストッキングを被って、顔だけを出しています。


順番に寝転んで重なり合い、顔を寄せていきます。もはや誰が誰だか…笑
苦しい体勢ですが、いざ撮影が始まると次々とコミカルな表情を作ってくださり、とっても楽しい写真ができあがりました。さすがです。


待ち時間の様子も非常にシュールでした。

2011年に初演、14年にはロングラン上演を成功させ、「フェスティバル/トーキョー15」のオープニングを飾ったSPACの大ヒット作。
まだご覧になっていない方、何度でも観たい方、皆様お待ちしております!!

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SPAC秋→春のシーズン2016-2017 ♯5
『真夏の夜の夢』
2017年
2月25日(土)/3月5日(日)・11日(土)・18日(土)・19日(日)・20日(月・祝)
演出:宮城 聰
作:ウィリアム・シェイクスピア 小田島雄志訳『夏の夜の夢』より
潤色:野田秀樹
音楽:棚川寛子
出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2016年12月29日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#6】年末の劇場は仕込みで大忙し!

今年も残すところあと数日ですが、劇場では舞台の建て込み真っ只中、照明や音響作業も同時に進行し、静岡芸術劇場内各所で『冬物語』の稽古や作業が着々と進んでいます。


なかなかお目にかかることのない搬入口!
舞台芸術公園で作られた舞台装置が芸術劇場に運び込まれました!    


劇場客席には、舞台装置の模型の一部が…
何やら指示が書き込まれています。


あれ?舞台上にミシン?


このクルクルしたもの、何でしょう?
お見せするのは1本だけですが、
実はびっくりするくらい大量にあります。


もくもくと作業する創作・技術部スタッフ


劇場エントランスにも
『冬物語』の大きなディスプレイが!

リハーサル室での稽古も細かな作業に入ってきているようです。

ここから先は、研修でいらしている佐藤結さんの稽古場レポート第二弾です。

宮城さんからはムーバー(動き手)の演技について、人形浄瑠璃における人形遣いと人形の関係になぞらえて説明が入るのですが、動かす対象に生身の肉体と人形の違いはあれ、人形劇にも通じる話でとても興味深く拝聴しています。

今回の舞台では二人一役ということで、人形浄瑠璃における義太夫をスピーカー(語り手)が、三味線は打楽器の生演奏が、そしてムーバーは、いわば、人形遣いと人形の役を一人で担っているのです。人形遣いが人形を操るように、ムーバーは、自らの身体を自らで操っています。スピーカーとムーバーの二人一役とは言いますが、稽古をみていると、ムーバーの俳優はさらに自身の二人一役、つまり自分の身体とそれを操る遣い手としての自分とを自らのうちに含んでいるように思えてきます。日常においても心身一致の状況が人間の常態でないとはいえ、意識的に心身を分けて捉えるというのは並大抵の作業ではありません、、、!


中央に立っているのがムーバー、両脇に座っているのがスピーカー。
(舞台芸術公園での夏の稽古の様子から)

人形劇における人形は、人形遣いが持たない状態ではただの死に体、人形遣いが意志を吹き込んでこそようやく命を持った存在として生きることができるのですが、ムーバーはこの作業をひとりで行っているというわけなのです。人形劇の人形については、「ある作品のためだけに作られ、作品の上演される間にだけ生きる存在であるからこそ役者として純粋である」と人形劇関係者はよく言うのですが、作品の上演される時間以外にも人間として生き、生活をする生身の肉体を操り動かすことのむずかしさをSPACの二人一役には感じます。

二人一役の手法を用いた作品を初めてご覧になる方には、スピーカーとムーバー、生演奏と、どの要素も気になって目まぐるしく視点が移り大変かもしれません。そんなときには、作品を構成するひとつひとつの要素を分解して観劇するのもおもしろいと思います。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
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2016年12月27日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#5】今回の舞台は二人一役!

SPACは舞台芸術の専門機関ということで、年間を通じて国内外から様々な方が、視察や研修にいらっしゃいます。

現在は、大阪で活動する「人形劇団クラルテ」で制作に携わる佐藤結(さとうゆい)さんが、研修でいらしています。

今回は、佐藤さんに書いていただいた稽古場レポートをご紹介いたします。

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SPACブログをご覧の皆様、初めまして。

文化庁委託事業・芸団協による国内専門家フェローシップ制度で、12/12(~1/22)よりSPACにてお世話になっております、佐藤結と申します。研修先は第3希望まで申請できるのですが、もともとSPACの作品が好きで(観始めてまだ3年ぐらいの新参者ですが)、静岡から世界へ羽ばたく作品を生み出すSPACという集団の秘密が知りたくて希望しました。普段は大阪の人形劇団クラルテというところで制作の仕事をしていますが、SPACは規模も大きく、何より静岡芸術劇場と舞台芸術公園の施設を使って活動しているということで、普段いる環境とは全く違い、驚きと発見の毎日です。

研修初日は、ちょうど1月に初日を迎える『冬物語』(シェイクスピア/作)の稽古が始まるということで、稽古を見学させていただきました。
このブログを読んでいらっしゃる方は、SPACの作品を度々ご覧になられているかと思います。SPAC芸術総監督の宮城さんの作品の特徴のひとつに、台詞を話す人(スピーカー)と動きを担う人(ムーバー)でひとつの役を演じる手法がありますが、『冬物語』はほぼ全編この形式で上演されるそうです。そして、生演奏。人形劇の世界でも、見覚えがあります… そう、大阪が誇る伝統芸能「文楽(人形浄瑠璃)」に似ているんですよね。人形劇のための戯曲を数多く執筆した近松門左衛門も、芸というものは虚(ウソ)と実(ホント)の皮膜にあることだと論じており、人形劇の虚構性を愛しました。もともと演劇にも虚構の要素がありますし、二人一役という手法にもそんな印象を受けます。

さて、『冬物語』を書いたシェイクスピアと、日本の近松。同じ劇作家ということで並べられることも多い2人ですが、宮城さんによると、その趣向は大きく違うようです。しゃべればしゃべるほど人物の個性が現れるシェイクスピア劇に対し、近松作品(および日本の伝統芸能)の登場人物は、立場・シチュエーションを体現しており、個性ではなく類型的な人物として描かれているのだそう(とは言えシェイクスピアも最晩年には個性的な人物を描くことにさほどの関心を寄せていないようで、『冬物語』に関してはそのかぎりではないとのこと)。そういう意味で、近松作品は二人一役に向いているが、シェイクスピア作品(晩年の作品を除く)は向いていないという傾向があるそうです。そのことは、文楽では作品ごとに人形を作るのではなく、登場人物の類型に合わせた首(かしら)を選び用いることからも見てとれます。よく、人形劇の世界では(人形劇作品のために書かれた戯曲が少ないため)、人形劇に向く作品とそうでない作品と戯曲を分類して話すことも多いのですが、そのことの意味をここへ来てはじめてわかったように思います。

現在、稽古場では棚川さんの指揮の下、音楽の制作も同時に進行しています。楽器の演奏、ムーバー・スピーカーの稽古、そして稽古場以外でも各スタッフが動いており、まさに圧巻の集団創作といった趣。SPACという劇団の底力と奥深さを感じる日々です。

シェイクスピア作の『冬物語』が、どんな二人一役の舞台作品になるでしょうか……? 今から楽しみです。

皆様も、どうぞお楽しみに。

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
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2016年12月24日

【シェイクスピアの『冬物語』稽古場ブログ#4】舞台音楽家・棚川寛子インタビュー【後編】

宮城作品を彩る数々の音楽を手掛けてきた棚川寛子さん。
その作曲の舞台裏に迫るインタビューの後編をおおくりします♪
【前編はこちら】

(本インタビューのショートver.は、12/15発行の「グランシップマガジン」に掲載されています)

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――棚川さんは、もともとは舞台で演技をする側だったと伺いました。俳優をしていたときの経験が役に立っていると感じることはありますか?

それはあると思います。練習中に俳優から、「ここは音が大きすぎる」「私の台詞が聞こえないから、音楽はもっと小さい音で演奏してくれない?」といったオーダーが入ることがあるんです。そういうときは、私自身も演技をしていましたから、「それはそうかも」と理解できます。ですが、舞台音楽の作り手として「この場面では絶対に音を入れたい」という譲れない部分はありますし、宮城が「この場面には音楽を入れて」と指示する場合もあるので、そのあたりはもうお互いせめぎ合いですね。

――舞台音楽を作る上で、棚川さんが大事にしていることを教えてください。
 
芝居全体の流れ、でしょうか。台本をもらったら、「芝居全体をどう見せるのか」「宮城はこの作品をどう着地させたいのか」といったことをまず考えます。そうやって作品を俯瞰してから、次に、じゃあ音楽はどうしようか、と全体を通しての音楽の戦略を立てて、そこから場面ごとの曲を作ることが多いです。
テンポ感も大切にしています。どんなに素晴らしい作品であっても、お客様の集中力が途切れる瞬間ってあると思うんです。それを見計らって、あえて演奏をストップしちゃうとか。無音も音楽なんですよね。急にまわりが静かになると、「ん?」とちょっと気になっちゃうみたいな、あの感じです。芝居の流れが悪くなりそうな場面でわざと曲のテンポを上げるケースもあります。お客様の期待に時に応えたり、時に裏切ったり、バランスを上手く取りながら曲を構成する、といえばいいのでしょうか。そのあたりのことを意識しながら作っています。

――舞台音楽の仕事で、どんなときに達成感を感じますか?

上演が始まる前の、「これで初日に出せるクオリティになったな」と感じたときです。ああ、よかった、とつくづく思います。

――棚川さんのお仕事について、宮城芸術総監督が何かコメントされることはありますか?

以前は具体的なオーダーがあったり、作品の稽古に入る前にミーティングをしたりもしていたんですけど、最近は、かなり任せてもらえるようになった気がします。以前は、芝居先行だったんですよ。俳優が読み合せ(俳優が台本を持って、自分の役の台詞を動きをともなわずに読む稽古のこと)をして、そのあと動作をつけて、それを見て音楽を作るという段取りだったんです。それが最近は、稽古が始まって俳優が読み合せをはじめる前に、「じゃ、音楽から行こうか」と無茶ぶりされることが増えました。そんなときは、「きたー!曲からかー!」と頭を抱えます。まあ、音があったほうが俳優が稽古しやすい、という宮城なりの配慮なのかもしれませんが。

――棚川さんから見た、「宮城芸術総監督のここがすごい!」というところがあれば教えてください。

面倒くさいことを避けないところが魅力かなと思います。
宮城は、「まあよくもこんなにいろいろな役者を揃えたな」と感心するぐらいの人数で演劇をやるんです。20~30人近い俳優が出演することもあります。俳優が多ければ多いほど制作は大変です。意見をまとめるだけで一苦労ですし、俳優によって作品に対する消化スピードも違いますから。ある面においては、少ない人数で芝居をしていたほうがラクかもしれません。それでも、わざわざそれだけ人数を集めてやるのはなぜか。宮城はよく「祝祭音楽劇」という言い方をしますが、宮城が言う祝祭性というのは、音楽や演劇そのものというよりは、年代も性別も、ときには人種も違う多様な人間がオンパレードでいる、その状態を指しているのだと思うんです。多様な人間がたくさん集まってアンサンブルな芝居をする。それ自体が、社会生活の縮図になっていて、私にはそこがすごく魅力的に映ります。同時に、恐ろしく面倒くさくもあるんですよ(笑)。でもそこを避けては面白いものは作れないと私は思いますし、宮城自身もそう感じているのではないでしょうか。面倒くささのその先にある豊かな何かを、宮城はこれまでの経験から知っていて、だから敢えて少人数の芝居はやらないのではないか、と思うんです。
誰もが避ける面倒くさいところから逃げないのが宮城の魅力だ――。そうわかっていても、いざ制作が始まるとケンカもします。怒鳴り合った末に、「もうあなたとはやりません!」と宣言したこともあるくらい(笑)。それでも、演劇を通して宮城が見たいと思っているものと、私が見たいと思っているものが似ていることもあって、「『まあこんなものでいいか』という作品を作るよりは、面倒くささの向こうにある豊かさみたいなものを少しでも形にできて、それを観てお客様が感動してくれるほうがいい。だったら、もう少し一緒にやってみようか」と自分に言い聞かせながらやっている感じです(笑)。

――今後、こんな活動をしてみたい、といった展望はありますか?

音楽だけをつくりたいとか、バンドをやりたいとか、そういったことは全然思わないんですよね。私にとって舞台音楽は、俳優の芝居と一緒になってようやく完成するもの。「こういう曲の展開は今度やってみたいな」「この楽器使えそう」と思うことはありますけど、音楽が主役になるようなものは特に望んでいません。

――最後に、2017年1月から連続上演となる、「シェイクスピアの『冬物語』」と『真夏の夜の夢』それぞれの観どころ・聴きどころを教えてください。

『真夏の夜の夢』は再再演となります。野田秀樹さんの脚本がとにかく面白く、台詞のリズムもすごくいいんです。だから、曲作りはとてもスムーズでした。そんなテンポの良さや、華やかな雰囲気を楽しんでほしいですね。恋あり、ギャグありでわかりやすいストーリーも魅力で、演劇を観たことがないという方にもおすすめです。
『冬物語』については、舞台音楽の制作はまだこれからという段階でして、どんなものになるのか現時点でまったく見えていません(笑)。今回は制作期間がタイトなので、時間との戦いになるだろうと覚悟を決めています。
観どころとしては、本作は、演技をする俳優「ムーバー」と、台詞を話す俳優「スピーカー」が2人で一役をこなす宮城の代名詞とも言うべき手法で行います。シェイクスピア作品の上演スタイルとしては、類をみないものになると思いますので、その新しいチャレンジを見てもらえたら嬉しいですね。
また、宮城はよく、「役者の動き、台詞、音楽が三位一体にならないといけない」と言っています。私も俳優も、三位一体を通してはじめて立ち現われてくる何かを探し求めていますので、ぜひ皆さんにも劇場でそれを感じていただけたらと思っています。

2016年10月 静岡芸術劇場にて

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SPAC秋→春のシーズン2016 ♯4
シェイクスピアの『冬物語』
一般公演:1月21日(土)、22日(日)、29日(日)
     2月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)
演出:宮城聰 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子
音楽:棚川寛子 出演:SPAC
静岡芸術劇場
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2016年12月21日

【ポールのSPAC探検】海外の視線、『サーカス物語』の耳と目につながる魅力(後編)

皆さんこんにちは!

SPACインターン生のポールです!

paul

今は、12月23日まで静岡芸術劇場で上演されている『サーカス物語』について、字幕の操作を行っています。

前編では衣裳と照明についてお話ししましたが、後編は「音」にまつわるお話です。
(前編はこちら

まずは音響に関してなのですが、今回の芝居はミュージカルなので、歌と音楽もついていますし、マイクを使っています。マイクは音楽と俳優達の声を合わせる便利な道具です。マイクを使うことによって、俳優達の立ち位置に関わらず、音楽の音量はいくら強くても俳優達の歌う言葉がちゃんと聴き取れます。ただ、大変なところもあります。マイクの音量を俳優達が自分自身で調節する訳ではないので、正しいタイミングで音量を上げたり落としたりするのは音響のスタッフの役割です。

音響では、音のバランスを探す必要があります。先ほどもお話したように、俳優達は舞台の上で動きながら台詞を話すのでマイクの音量が変わったりします。

一番大変なのは、歌うときのバランスです。
なぜかと言うと、3つの要素を同時に考えてバランスを探さないといけないからです。
明瞭さ、与えたい印象と音量。言い換えると、音楽の音量が低いと歌が聞こえますが、印象的ではありません。音量を上げ過ぎるとうるさくなります。また音楽の音量が高すぎると歌詞が聞き取れなくなります。最も印象強くしたい場面では、音楽と歌の音量を合わせて、両方がうるさくならない程度にとどめなければなりません。俳優達も自分の声を音楽の音量に合わせて高くしたり低くしたりする必要もあります。このプロセスで、演出家の役割は「導体」に近いと思いました。

最後に、音楽と歌のこともお話ししたいと思います。

照明、音響、音楽を合わせると、様々なおとぎ話の風景を描き出すことが可能になります。
その風景を一番具体化するものは歌なのだと思います。歌詞の内容についても少しお話したいと思います。

一つ目は、芝居の最初に出てくる歌です。「ガラスの城」に引き込んでいる王女の話です。

空想のイメージを完璧・完全に表現している歌だと思います。日本語の勉強を始めて何年も経ち、ある程度に理解できるようになりましたが、このような歌を聴くと「やっぱり日本語は美しい言語だな」と思います。意味を問わず、まだ聞き取れなかった時と同じように音の美しさを聴くことができます。歌は澄んだ水の音素のように耳まで流れてくれるようです。それは勿論、歌い手の才能にもよります。音楽自体はクリスタルのピアノが優しく弾かれている感じで、歌詞もその雰囲気を強めます。

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その内容は「洞窟の比喩」にとても似ています。「洞窟の比喩」というのは、人間の状態をイメージで表そうとしていることです。洞窟の中では、人間が奥の壁を見ています。その壁に、犬、人、多様なものの影が火の光で映っています。その影は勿論ただの影ですが、それしか見たことがない人は、現実の存在に気付かず洞窟を出て太陽の光で歩こうとしていません。その王女も影に囲まれていて同じような状態になっています。ただ、彼女は夢の中で生きているということを認識しています。しかし、ずっと空想の中で生き続けると確かに夢のようで、苦しむことも死ぬこともないかも知れませんが、その山も、谷もない道は「生きる」と言えますか?つまり、苦しみ得ない幸せは本当に幸せなのですか?勇気を手に入れ、今いる不自由のない部屋の扉を開けて出るかどうか気になりました。その扉を押すと、苦しい現実に入るとともに、幸せが現れるかも??

二つ目にご紹介する歌は、シンプルな要素で出来ています。音楽はほとんどなく、小さいアコーディオンで、ピエロは幼い友達の為に歌っています。

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フランスのシャンソンの形ととても似ています。今でも素敵なアコーディオンの奏者はフランスにいて、そういう歌が日本でも聴けてとても嬉しかったです。
この歌は物語の流れで大切なポイントなのですが、そこから少し離れた見方をすると、この歌は誰もがある日感じた孤独の比喩としても見られるのではないかと思います。

先の歌と違って、別の世界へ案内するわけではありません。実は、私達の世界についてだと思えます。自分が人生で迷ったときについて感じさせられます。想像力。自分の顔が映っている鏡を見ると、確かに自分だと認識しているのですが、違うとも言えませんか?鏡で見ている顔は「その人は誰?」とも考えられます。その歌を聴くと、忘れていた記憶も出てくるかもしれません。昔失ったものの大切さ、今から探す尊さ。

『サーカス物語』の内容に関してはこれ以上話しませんが、もしこの記事を読んで「観てみたい」と思っていただければ嬉しいです。まだ、ご覧になっていない方も、是非ご覧いただければと思います。

★★★公演情報はこちら★★★★★
SPAC秋→春のシーズン2016 ♯3
『サーカス物語』
一般公演:12月3日(土)、10日(土)、18日(日)、23日(金・祝)
演出: ユディ・タジュディン (俳優・スタッフ一同の構想に基づく)
作: ミヒャエル・エンデ
訳: 矢川澄子 (岩波書店刊『サーカス物語』より)
静岡芸術劇場
*詳細はコチラ
★★★★★★★★★★★★★★★


2016年12月19日

「SPAC俳優の朗読で楽しむ中勘助」レポート

Filed under: アウトリーチ

木内琴子と片岡佐知子が出演した
朗読会「SPAC俳優の朗読で楽しむ中勘助」(11月26日開催)をレポートいたします。

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木内と片岡が中勘助の『鳥の物語』から「鵜の話」を選び、
二人で創りあげていきました。

舞台芸術公園のカチカチ山にて読み合わせを行ったり、

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楕円堂にて、ゲネプロ(本番と同じ流れで行う稽古)を行い、
細かな修正を重ねての本番となりました。

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中勘助の「鵜の話」には、
竜神に奪われた玉を取り返しに海へと身を散じた海女がでてきます。
「鵜の話」は謡曲「海士」として知られる海女の玉取り伝説物語で、
このお話を中勘助は鳥の視点で描いています。

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定員いっぱいの30名のお客様にお集まりいただきました。

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今回の朗読会ではお客様には台本を持ってご観劇いただき、
鵜が出てきて会話をする場面ではセリフを読んでいただきました。
みなさんの力のこもった朗読!
声のすばらしさに俳優も驚きました。

参加型の朗読会をお楽しみいただけたようです!

中勘助文学記念館のスタッフの方、
中勘助氏と交流のあった方々が来てくださり、
素晴らしい時間を過ごすことができました。
ありがとうございました。

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記念館内では、中勘助の著作が読めたり、
中勘助が過ごした杓子庵を楽しむことができます。
是非、皆様も足を運んでみてはいかがでしょうか。
http://www.city.shizuoka.jp/000_002241.html


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